[:ja]【映画】oasis:supersonic(2016)を観て(ネタバレ若干アリ)[:en]oasis:supersonic(2016)[:]

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観た日 2016年12月30日
観た場所 梅田ブルク7(大阪府大阪市)
私的評価  ★★★★★

大阪・梅田のE-MAにある映画館「ブルク7」にて鑑賞。

90年代を駆け抜け、2009年に解散したイギリス・マンチェスター出身のロックバンド「oasis」のドキュメンタリーフィルムです。

結論から言うと「いい映画」でした。ドキュメンタリーとしてだけでなく、ひとつの映画として面白いです。

映画は、バンドの結成から、その最盛期に開催された伝説の「ネブワース25万人ライヴ」までをたどっていくという内容。

製作総指揮には、バンドの中心人物であるノエルとリアムのギャラガー兄弟。それに関係者インタビューが合わさり、まるで自分もバンド・クルーのひとりであるかのような錯覚に陥るほど。臨場感が半端ではなかったです。

彼らが最も輝いていた時代である94年から96年を中心に、超音速(supersonic)で駆け抜けたバンドの、光と影を描き出しています。

「バンドのドキュメンタリー」というと、ファンだけが盛り上がる内輪ノリな作品なんじゃないかと思うかもしれません。まあ、この映画も実際そうなのかもしれませんが(笑)、少し違います。

他の音楽ドキュメンタリー映画と決定的に違うポイントは「兄弟モノ」であることなのかなと。「バンド」とは言えど実質はオアシス=ギャラガー兄弟とも言えるし、パーソナリティがまず強烈すぎる。それを追うだけで絵になるのです。

ちなみに筆者は10代からのoasisの大大大ファンなので、大きなバイアスがかかっていることは自覚しています。笑

ただ、リアルタイムで90年代を体験したわけではないです。もちろん、ネブワースにも行ったことはありません。その意味では、新鮮な視点で観れたのではと思っています。

さて、前置きが非常に長くなりましたが、映画を観て私が思ったことを中心に書いていきたいと思います。

「人生を変えたバンド!」”The band changed my life”

「俺(わたし)の人生を変えたバンドだ!」

これは、ファンがオアシスについて語るときによく出てくるワード。ファンへのインタビュー映像などでよく耳にする言葉です。

「人生を変える」とまでファンに言わせてしまう魅力は何なのか。

それは、「肯定感をもたらしてくれること」なのではないかと。

94年に発売された「Whatever」という曲があります。2002年にはSONYのCMで使われていたりと、日本で特に人気な曲です。聴いたことのある方は多いはず。

 

Oasis-Whatever

Whatever you do
Whatever you say
Yeah I know it’s alright

(訳)

君が何をしようとも

君が何を言おうとも

そう、大丈夫さ

ギャラガー兄弟風に言うならば、ファッキン・シンプルです。

小難しいことは言わず、ストレートにぶっ刺さってくるソングライター・ノエルの歌詞とメロディーライン。

それを唯一無二の、真似のできない歌声で歌い切るボーカル・リアム。

このあたりの「なんか知らんけど、聴いていると肯定感を与えてくれる」感じ。

映画全編、ずっと流れるオアシスの楽曲を聴いて、やっぱこれなんだよなと思いましたね、ファンとしては。

260万人が応募し、25万人が観たライブ

1996年8月10日、英国ハートフォードシャーのネブワース・パークでオアシスはバンド史上最大のライブを敢行。2日間で延べ25万人を集めるという、今の時代では考えられないような快挙を成し遂げました。

応募者数は、260万人。当時のイギリスの人口の4%にあたる数字らしいです。

※ピンとこないので参考までに調べたら、大阪市の人口は2,691,185人(2015年)だそうです。総人口が違うので比較にはならないですが、大阪市民のほとんどが「これ行きたいねん」と殺到する数字と考えると…すごい。

ノエルは「This is history(これは歴史だ)!!」と絶叫しましたが、まさにロック史に残る偉業を成し遂げたのです。

公開された2016年は、ちょうど20周年にあたる年。

インターネットが世界を席巻する直前の時期です。

その時期にこれだけの人たちを集める…その勢いについてもしっかり描かれています。

人はみな、悪党に憧れる。ロックスターのクレイジーさ

セックス、ドラッグ、ロックンロール!

ロック、とくにギターロックが下火になりつつあった90年代。その時代に颯爽と、超音速(supersonic)のように登場し、ロックスター街道をばく進していったオアシス。あの時代にこの言葉がこれほど似合うバンドがあるのかというほど、オアシスはその破天荒な言動でも注目を集めました。

ロックスター特有のハチャメチャ感、クレイジーさが

古今東西、人はみな、一度は悪党に憧れる(はず)。

自分には到底できない、ぶっ飛んだ生き方をしている人間に心を惹かれるーそれは江戸時代の日本人もそうだったし、90年代のイギリスでも同じ。20世紀はロックスターが憧れの頂点に君臨していたと思います。

親世代はビートルズであり、ローリングストーンズだったのが、我々にとってはオアシスだったと。

「俺らのスター」だったのです。「俺らにとってのビートルズ」だったわけです。

そして、「手の届かない高い存在」ではなく「そのへんに居そうな兄ちゃんたち」だというのがミソ。

バンドっていいよね!感

バンドをやっている(もしくは、やっていた)方には特におすすめしたいです。

メンバーを探し、スタジオに入り練習し、ライブハウスのステージに立つ。その一連の流れを通して得られる、あの独特の高揚感、仲間との一体感を自分も共有できている…映画を観ていると、不思議とそんな感覚になります。

バンド(っていうかあの2人)の緊張感もしっかり描き出す

oasisは2009年に解散しました。その原因は、リアムとノエルの兄弟喧嘩。

ドSで毒舌、コントロール・フリークなお兄ちゃん、ノエル。

「The・三男坊」、自由奔放・やんちゃなリアム。

両方、武闘派です。しかも、労働者階級出身の、ほとんどフーリガンみたいな人たち。このふたりが組んでぶつからないわけがないのです。心の底ではお互いをリスペクトし合いつつも、事あるごとに衝突を繰り返していました。

「モニターの調子が悪い!」などと言ってライブをバックレるリアム。そのプロ意識の低さにブチギレ、ボーカルのいないステージで代わりに歌い、唖然&騒然とする観客に頭を下げるノエル(その後、楽屋で弟を罵倒、からの殴り合い)

18年間の活動中、世界中で何度も見られたこんな光景(ちなみに、福岡では2回も兄弟喧嘩が発生)。

「いつ解散してもおかしくない感」はファンの共通認識だったと思います。それがついに起こってしまったのが2009年でした。

こうしたバンドの緊張感も作中に散りばめられています。

映像のつくりが秀逸

監督はマット・ホワイトクロス。長編映画のほかにコールドプレイ、ローリングストーンズ、JAY-ZなどのPV制作も手がけているとか。脇を固めるのは、エイミー・ワインハウスの生涯を描いたドキュメンタリー「AMY」でアカデミー賞を受賞したアシフ・カパディア。

なるほど、つまり「音楽の映像」を知り尽くしている人物が作っている映画なわけで、その手腕が遺憾なく発揮されているのです。

まずはテンポの良さ。

この辺は、数分という限られた表現時間の中で映像をつくるPV制作のテクが凝縮されている。そう感じました。各シーンが絶妙な長さで、飽きさせない上手いつくり。

かと言って情報の密度が少ないかといえば、そんなことはまったくない。「よくこれだけの情報量をまとめあげたな…」と驚嘆しました。なんでも総取材時間は数百時間にも及ぶそうです。リサーチャーを雇って情報の整理から始めたとか。

次に、手書き風のイラストを切り貼りしていくかのようなエフェクトが差し込まれているところ。これがまた良いのです。小気味好く当時の出来事を伝えてくれる、観ていて楽しい仕掛けでした。

凄まじいまでの情報量を視覚で一気に伝えてくれます。

関係者は、あえて声だけでの出演。写る姿は当時の映像で

これ、地味にすごいポイントなんじゃないかと思いました。すごーくよく考えられているのでは。

昔を回想するドキュメンタリーとなると、イケていたロックスターも今や昔…もはやただのおっさんじゃん!となりがちです。そんでもって、彼らが「あのころは良かった」と昔話を続ける…という構図になりがち。

ところがこの映画は、ノエル、リアムを含めた関係者全員が、声のみの出演であり、映像で映し出されるもは当時の姿だけ。これが全編にわたり徹底しているのです。

まあ、いいんですよ。「あの頃」と姿が変わってしまうのは自然の摂理なので仕方がない。けれど、ロック界隈に関しては、正直ちょっとガッカリ感が出てしまうのは否めない。「え、いまもうこんなおっさんなの…?」というインパクトがデカいのです(まあ、書いているこの私もおっさんなのですが…笑)

あくまでも「当時の空気感を観客にも体験してほしい」という制作側の思いが感じ取れました。

喧嘩別れしても残る兄弟愛

これが最大のテーマ、見せどころだったのかも。

喧嘩別れしたはずなのに、出てくるのはお互いへの賞賛の言葉がほとんど。発言だけピックアップすると、「仲直りするのでは?」と思ってしまう。

が、しかし。事はそう単純ではないという…。

お互い認め合い、愛し合いつつも、ふたたび一緒になることはもうない、まさに悲劇と言うべきなのかも。

このあたりは、彼らの両親との関係性を交え、これまでになく鮮明に描かれています。母であるペギーさんが登場し、育った過程を克明に語っていたのが印象的でした。

アル中で毎日暴力を振るっていた父親の影響(ノエルはそれが原因で心を閉ざし、ドラッグや盗みに手を出すようになってしまう)、母親の愛に対する兄弟同士の嫉妬…。

観ていて色々と想像してしまい、何度か涙しました。

究極にファン思いなノエル、リアム

劇中に何度も出てくるのは、自分たちの曲を聴いてくれたファンへの感謝の言葉。詳しくは劇中で実際に聞いてみてほしいと思います。昔からのファンの方は、もしかするとビックリするかも(とくにあのツンデレ毒舌兄貴が実にストレートな言葉で感謝を表現しています)。

傍若無人に振る舞い、罵詈雑言を撒き散らすワーキングクラス・ヒーローの口から発せられる、温かい言葉たち。

たしかに彼らはハチャメチャなロックスターではあったけれど、ファンのことを愛していたし、大事にしていた。

もはやロック史に刻まれた伝説のバンドとなったオアシス。けれども、なぜだか不思議と「過去のバンド」にはならないのです。

解散しても、ファンのことを考え続けてくれているんじゃないか。映画を観終わった後、真っ先に思ったことは、これでした。

この映画は、いわばファンへのプレゼントなんじゃないかと。私はそう結論づけました。

ツンデレ兄貴は「いや、違うな。カネのためだ」とか言いそうですが…(笑)

以上、なんだか熱が入り、長くなってしまいましたが(汗)、「oasis:supersonic」の感想でございました。

ここまでお読みいただいた皆様、ありがとうございました。

oasis:supersonic

ちなみに海外ではもうDVD化

国外では既にDVD・Blu-rayが発売されているようです。「地元の映画館でやっていない!」「マンチェスター訛りの英語を解読できる」という方は、購入してみてもいいかもしれません。

 

 

 

 

 

[:en]

 

On 30th December 2016, I saw the movie “oasis: supersonic (2016)” at “Umeda burg 7″in Osaka city. I really enjoyed this film. So, I would like to easily comment on this article.

It was exactly “supersonic”

This movie is focused from 1994 to 1996 which is their heyday. That time was the time when they ran through to the top with “supersonic” speed.

I do not know well about that time. Because I became a fan of “Oasis” since 1999. Of course I have not even been to Knebworth Park.

This film brings a wonderful experience for relatively new fans like me as well as being the best work for fans who want to look back on those days.

They were not just a band

Oasis was not just a band. Of course their music is wonderful, and of course the charisma of the Gallagher brothers is matched.

I think that it was “oasis” not only music, but also the way they live, the relationship with fans, and others.

Probably it was a present from Noel to fans

Noel Gallagher said in an interview what he says, “I will do something in 2016, the twentieth anniversary of Knebworth Gig.”

And in the movie, he repeatedly thanked us for words. That is also a very straightforward phrases.

Based on these, I think that he gave a present to us. With the meaning “thank you for being a fan all the time.”

It goes without saying that the creative team of this movie, including the director, has a great achievement.

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