『移動祝祭日』 E.ヘミングウェイ|土曜文庫

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あなたは私のものだ。全パリも私のものだ。

――もしきみが幸運にも青年時代にパリに住んだとすれば、きみが残りの人生をどこで過そうともパリはきみについてまわる。なぜならパリは移動祝祭日だからだ。1920年代パリの修業時代を描くヘミングウェイ61歳の絶筆を、詩人・福田陸太郎の定訳でおくる。

土曜社『移動祝祭日』

1920年代、パリ。「狂乱の時代」と呼ばれた時代に、著者は同地で修行の日々を送った。

老境に至った著者が、その日々を回想して書いた小説だ。

折に触れて持ち出す本のひとつ。ヘミングウェイの作品の中で最も好きな作品だ。

簡潔さ、無駄を削ぎ落としたタイトな文章。著者の文体の魅力を堪能できる究極の一冊だと思う。

個人的に思う最大の読みどころは、随所に散りばめられる文章論かもしれない。

文章論というか、自分が何を書くべきなのかという問い。下記に引用する一文に、全てが凝縮されている気がした。

「くよくよするな。お前は前にもいつもちゃんと書いているんだから。今も書けるだろう。しなくちゃならぬことは、ただ、一つの本当の文章を書くことだ。お前の知っている一番本当の文章を書くんだ」

p,20

土曜文庫版が好きだ。ご覧の通り、装丁が素晴らしい。イラストや派手な装飾がないシンプルなデザイン。カバーさえない。無性に持ち歩きたくなるし、人にプレゼントしたくなる一冊でもある(ゆえに私のは既に四代目)。

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