WordPressは、先月(2021年5月)で18年目を迎えたそうです。心からおめでとうと言いたいです。
近頃は、WordPressを使ってお手伝いをする機会が増えてきました。
良い機会なので、なんでこんなに長い期間、使っているのかを振り返りつつ、どういう思いでWordPressを使っているのかということを一度整理してみたいと思います。
(とっ散らかった思考録なので、後で書き直す可能性大です)
創始者から直接話を聞けたこと
オープンソース、使い勝手のよさ、わかりやすいインターフェイス、etc…
利点は数あれど、何より創始者のMatt Mullenweg氏のファンであることが大きいです。どのような人物が、どのような思いではじめたのか。企業でも重要なことだと思います。
2014年、氏が来日し、東京や大阪などで基調講演を開催しました。ベルサール新宿グランドの大ホールで開催された会に参加しました。大会議場に、おそらく数百人は訪れていただろうかと思います。
(少し余談を挟みます。その当時、恋人と別れたばかりで、傍目にもわかりやすく落ち込んでいました。みかねた友人が「暇してるんなら、これ、行ってくれば」と紹介してくれたイベントだったのでした。参加当日に知ったのですが、自らのために確保していた1席を、落ち込んでいた私のために譲ってくれたのでした。彼のことを、心の中で「メロス」と呼ぶことになりました)
新宿でのこの講演中、氏が何度もつぶやいていたフレーズが、”Democratize Publishing”と”Code is Poetry”でした。
この2テーマは、今も鮮明に頭に残っています。これは、Matt氏のみならず、WordPressが掲げる理念にも含まれていると感じます。
当時の私には、難しいことは一切わからなかった。コードは詩どころか呪文にしか見えなかったので、もっぱら前者に興味を持つことになりました。
パブリッシングの民主化
日本語的思考で直訳すると「出版の民主化」となってしまいます。しかし、それは違います。
「あらゆる発信を民主化する」ということ、と私は解釈しています。
このミーティングに参加するまでは、WordPressというのは「プログラミングが関与する複雑な物事を、水準を落とすことなくいろんな人に使ってもらいたい」ということなのだと理解していました。
直接Matt氏の話を聞いてからは、「この人は、もっと社会的なベネフィット(※)を考えているに違いない」と確信するようになりました(※これも「利益」などと直訳するとちょっと違うので横文字にします。ううむ、英語は難しい。)。
氏は、講演中「You can help your neighbor.」ということを口にしていたのが今でも思い出されます。WordPressを使って、身近な大切な隣人と手を取り合うことができる。Neighborhoodを築くことができるのだ、と。
(2018年にはこういうエントリーをあげていて、やはり間違っていなかったと膝を打ったものでした)
2012年ごろのことでしょうか。イヴァン・イリイチの「コンヴィヴィアリティのための道具」を読んでいて、「SNSこそがその実現のためのツールなのだ」と思っていました。しかし、その後の世の中のSNSを通じた熱狂にはどうも乗り切れず、距離を置き続けて結局終わりました。
帝国の逆襲
iPhoneの発売から10年以上が経過し、スマートフォン、SNSのより一層の普及によって、あらゆる分野で個人が力を発揮できるようになりました。
「Individual Empowerment」の時代とも言われます。個人が力をもつ時代。加速度的な技術革新によって、発信者としての個人の力も強化されました。一方で、自ら意図せぬ形で、知らぬ間に大きな力に絡め取られる気もしています。それも、急速に。
そして、SNSは政治議論には決定的に向いていないとも思います。前々回のアメリカ大統領選などは、(残念ながら悪い意味で)象徴的な出来事と思いました。なぜか日本においても、残念な投稿を目にすることが多々ありました。あのことを遠因として、私はfacebookをほとんどやめ、Twitterとinstagramとは家庭内別居のような状況が続いています。
付け加えるなら、あの選挙とその後の諸々の出来事は、かつての帝国が逆襲をかけてきたかのようだ、などと思っていました。
自立共生のための道具として
繋がりすぎた世界が急速にシュリンクしていくのか。または、バックラッシュ的にグローバル化が再進行するのか。わかりません。
いずれにしても、極端な勝者総取りの論理が今後も蔓延っていくような怖さがあります。
しかし、諦めてはいけない。まだまだそう言えるのだと信じたい。そう思っています。
個々人が、引き受けて考える。じっくりと腰を据えて意見表明をする。または、それを整える機会にする。そして、自立した個人として、適当につながる。テキトーではなく、適当に。
その道具として、WordPressを位置付けています。
ただのWEB開発ツールというだけでなく、チャラいコミュニケーション的何かのノリではなく。
自立共生を実現するツールとして大切に使っていきたいし、周りの人たちと分かち合いたいと思っています。今後は、いろいろなところでそれを顕在化していきたいと思っています。
企業家・経営者としても大好き
最後に。企業家としても尊敬しています。
2019年の時点でこういうことを言っています。サービス運営者としてだけでなく、企業家としても相当な先見の明があるのだなと思うのです。
素晴らしいので、ぜひご覧になっていただきたい。日本語の字幕もあるので、ぜひ。
来日中には、なんと直接、話をさせてもらいました。講演の合間に普通に会場内を歩いていて、思い切って話しかけたとても気さくで感じの良い方でした。英会話もろくにできない私に、10分以上も時間を割いていろいろと話をしてくれました。気さくなナイスガイ。個人的にも好きな方です。